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薬指の標本   L' ANNULAIRE

2008–10–04 (Sat) 00:00
薬指の標本   
★★★★★★★☆     公式サイト   

この靴を履いたまま、 
彼に封じ込められていたいんです。



始まってすぐ、キラキラしたガラス瓶の美しさと、ベルトコンベアーで流れる無数の瓶の揺れる音が、まるでアートの如く五感を刺激する。
そこはヒロインの勤めるソーダ工場(原作ではサイダー工場) イリスは作業で切り落とした薬指の先をソーダ水のなかに落としてしまう。そんなオープニングで始まる夏の暑い日の或る出来事。彼女は工場を辞め、導かれるように、森のなかにひっそりと佇む古い館のドアを叩く。


イリスは存在そのものが美しく、少し探るようなデリケートな面差しはどこか少女のようでもあり、でも、ひらひらと揺れるワンピースに包まれたその汗ばむ肢体は、艶やかな女そのものでもある。


標本技術師は、存在そのものがそこはかとないミステリアスさを醸し出している。その館には、若いころから住んでいる二人の老女がいる。その老女たちの若いころの集合写真に、何故か技術師が今のままの風貌で映っている。
そして、訪れる依頼人もまた音や頬の火傷跡といった、忘れたい過去の想い出や残骸を、標本にして欲しいと訪ねてくる。彼は何でも標本にできるとイリスに言う。けど実際、どんな標本になったのかは謎のままで、火傷の少女は技術師の謎の部屋に案内されたっきり、出てきた形跡もない。


わたしはまだ、一度も開けたことのないないその扉の前に立ち、ノブを握ってみたが、動く気配はなかった。重い鍵が何重にもかかっている様子だった。仕方なく、扉に耳を押し当て、目をつぶってみた。
向こう側は深い静けさの森だった。すべてのものがしんと息をひそめ、ただ静けさだけがゆっくりと渦を巻いていた。わたしは長い時間、そのうねりだけを聞いていた。しかし、いつまで待っても、何も起らなかった。



技術師の無機質で見透かすような謎めいた眼差しと一種独特なフェティシズムに、次第に虜になるイリス。いつしか、シュールで陶酔的な官能にうずもれる。彼女に綺麗な赤い靴を毎日履いて欲しいとプレゼントする。その靴を自ら履かせる技術師の倒錯めいた様子は、フェティシストを超えたパラフィリアにちょっと近いのではないかとも思える。その靴はイリスの伸びやかで形のよい脚にピタリと張り付く。もうその靴以外は履けないかのように。そして、彼女の脚だけにとどまらず、彼女そのものを侵食してゆくかのように。イリスは禁断の扉を開ける。彼の究極のフェティッシュとして存在することさえもいとわずに。


小川洋子さんの原作の世界観を、フランスの女性監督 ディアーヌ・ベルトランが舞台をフランスに変えて、忠実に、そして見事に再現している。五感を刺激するソーダ工場、凛と静まり返った謎めかしさの漂う館と標本室。原作にない俗的な港町やホテル、幻想のなかを浮遊するかのような独特の空気感漂う色彩や描写も、音楽や音の使い方も、そして、登場人物さえも、原作以上に繊細で芸術性を帯び、全てを通して魅力的。オルガ・キュリレンコは元スーパーモデルなのだから洗練されているし、着こなしも素敵なのだけれど、それをどこか素朴で憂いを湛えた繊細な役作りのオブラートで覆い、でもそれがとても魅力的なのだ。

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